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「社会は変えられる」と思いたい…ある記事についてのコメント

みなさん、こんにちは。FP黒田です。

12月9日の朝日新聞朝刊・デジタル版で、次のような記事が掲載されました。

国保料の軽減、「病気離職」は対象外? 原則は倒産・解雇、職探しが要件

内容は「非自発的失業」の方の国保減免の話で、最後に黒田のコメントも載っています。

ただ、これは単に取材を受けたのではなく、こちらから能動的に朝日新聞の記者Ⅰさんに働きかけ、実現した記事なのです。

遡ること、3年ほど前、私が所属するがんと暮らしを考える会の勉強会で、社労士のFさんが、この問題を取り上げてくださいました。

「非自発的失業」というのは、解雇や会社の解散など、ご自身が望まない失業をされた方が、国保に切り替えた場合に減免される制度です。

ただ、制度を利用する際、雇用保険の「受給資格者証」の提示が前提となり、傷病による解雇や、傷病による自己都合退職では対象になりません。

例えば、東京都板橋区のHPにはこのように記載されています↓

国民健康保険料の軽減・減免|板橋区公式ホームページ (city.itabashi.tokyo.jp)

私たちのように、がん患者さんの相談を受けている現場でも、「実際に、自治体に相談に行ったけれども、雇用保険の受給資格者証がないからダメと言われた」などといった方が何人もいらっしゃいました。

また、「病気の治療が落ち着いて、働けるようになって受給資格者証を受け取ったら、さかのぼって適用になりますから」などと言われても、働いていない今が苦しいのだし、求職活動ができない可能性だってあります。

そもそも 、この「非自発的失業」の減免制度は、リーマン・ショックによる失業者向けの救済策としてできたという経緯から、傷病による離職の方を想定していません。

しかし、元々の制度趣旨はそうであったとしても、現実に一番困っている病気を抱えた失業者の方が減免を受けられないというのは、やはり問題ではないかと、相談に従事する仲間たちと話し合ってきたのです。

それを昨年末、コラムにまとめたのが以下の記事です。

国民健康保険料の「制度矛盾」…? 病気失業でおカネがないのに「保険料減免」されないという衝撃事実!(黒田 尚子) | マネー現代 | 講談社(1/4) (ismedia.jp)

国民健康保険料が「半額以下」になる制度が受けられない…! がんで会社を辞めた中年男性が直面した「役所の対応」と「ひどすぎる現実」(黒田 尚子) | マネー現代 | 講談社(1/6) (ismedia.jp)

さらに、この問題についてブログに書いたところ、ご連絡をくださったのが、行政書士Ⅰさんでした。

「同じように困っている患者さんがいらっしゃいます。黒田さんのブログにあった代替資料で対応してくれる自治体とは、具体的にどこでしょうか?」とのお尋ねでした。

例えば、冒頭の記事にも紹介されている千葉県松戸市では、「雇用保険の特定受給資格者(65歳未満)及び雇用保険の特定理由離職者(65歳未満)に準ずる離職者で、失業給付の受給資格のない方については、非自発的失業者の国民健康保険料の軽減と同内容の減免申請を受け付けております」とあります。

国民健康保険料の減免|松戸市 (city.matsudo.chiba.jp)

これは、独自に「減免取扱要綱」を定め、「特例対象被保険者等に準ずると認める者に対して保険料の減免を行うもの」としています。

つまり、雇用保険受給資格者証が発行されない傷病手当金の受給者については「本来の特例対象被保険者等には該当しない」という前提のもと、要綱で「準ずる規定」を設けて救済措置を図っているようです。

どのような経緯で、独自の救済措置が設けられたかはわかりませんが、なんだかすごい…。

行政書士Ⅰさんは、なんと総務省の関東管区行政評価局に相談し、厚労省に照会もしてくださったのですが、とくに進展はなし。

その後、数カ月前に、前掲の社労士Fさんが、朝日新聞のⅠ記者に、この問題を取り上げてもらえないか連絡したところ、冒頭の記事につながったわけです。

記事に登場する60代男性は、行政書士Ⅰさんがサポートしておられるお客さまでした。

もちろん、これで状況が激変するとは思っていませんが、「何かおかしい!」「これを変えたい、良くしたい!」と感じるようなことがあれば、声を上げることは大事だと考えています。

私たちの力でも社会は変えられると思いたいのです。