みなさん、ごきげんよう。FP黒田です。
先日、この秋出版予定の本の取材のため、肝細胞がんに罹患されておられる松崎匡さんにインタビューしました。
ちなみに、松崎匡さんは、こんな方です↓
日経BP Special「がんと共に働く・知る・伝える・動きだす」/肝細胞がん治療の傍ら業務を継続
松崎さんが肝細胞がんと診断されたのは、2010年2月のこと。
当初は、早期発見で腹腔鏡手術で切除したものの、約1年後に再発。現在はステージⅣb。手術後の合併症等で、ほぼ毎月入退院を繰り返し、この6年間で19回も入院をしておられます。
今では、病院から「お帰りなさい」と言われるほどだそう(苦笑)。
今回の取材では、治療にどれくらいの費用がかかったかを教えていただいたのですが、なんと、ざっと入院費用(手術・治療等含む)だけでも、医療費総額約2,575万円にものぼりました。
もちろん、自己負担はこの3割ですし、高額療養費の適用(多数回該当含む)がありますので、実質的な自己負担は約133万円まで圧縮可能です。
これまで色々ながん患者さんの費用負担のケースを見てきましたが、今回ほど高額療養費制度の威力を思い知らされたことはありません。高額療養費制度って、すごいです!
ただ、入院する場合、入院時の食事代の一部の自己負担があり、これが1日3食780円(1食につき260円)(食事療養標準負担額といいます)かかります。
松崎さんの入院日数を概算500日で計算すると、500日×780円=39万円です。この費用は、高額療養費等の対象外。
なお、この入院時の食事代の一部は、今年5月に成立した改正医療保険関連法で、2016年~2018年にかけて段階的に引き上げられることが決まっています(2016年→360円、2018年→460円)。
実は、入院時の食事代って、1990年代初めくらいまでは、検査や手術などと同じ「療養の給付」として、健康保険から給付されていたんですよ。でも、患者により自己負担を求めていく方向性は、今後も変わらないでしょうね。
このインタビューを終え、数日後にはまた入院するという松崎さん。色々と貴重なお話をたくさん伺いましたが、「がんで、『死なない』んじゃなくて、『死ねない』んです」というお言葉が印象的でした。
入退院の合間を縫って、メールなどで福祉事業のコンサルティングやコラム執筆などを行い、前向きにがんと向き合いながらも、限られた収入の中で、自分やご家族の治療費や生活費をいかに捻出していくべきか、真剣に考えておられる姿を拝見して、がん医療の進歩が生み出した新たな課題について、まざまざと考えさせられたような気がします。